60代女性
この痛みに悩まされてきたのは30年前からです。
31才の頃、引越しの疲れか腰が痛いなぁなと思っていました。しばらくして首、肩、胸、背中、腰と体中凝ったような痛みになって、運動不足かと思いプールで体を解そうとしました。次第に激痛となり普通に歩くことができなくなって、整形外科に行くと骨に異状は無いとの事で、腰に痛み止めの注射の処置と、鎮痛剤を処方してもらいました。痛みに強弱があって改善しているようには思えませんでした。掌や踵に無数の膿疱ができて、皮膚は赤くひび割れ血が滲みぼろぼろに剥けて、慌てて近くの皮膚科に行き何種類かの塗り薬を処方してもらいました。評判の良い皮膚科や整形外科、整骨院、整体院、カイロプラクティック、マッサージ店を巡りました。
咳やくしゃみで激痛が走り、息をするだけで胸が痛く、寝返りがうてなくなり、一晩中胸を摩りながら眠れない夜が多くなりました。病院を転々としながら、はっきりした病名もわからず5才と8才の子供を抱えて苦しい日々が続き、そんな頃頭皮にもかさぶたができ、耳の中、臍の中もジュクジュクしていて自分の体のすべてが憂鬱でした。痛みが強いわりに高熱が出ることは無かったので、次第に夫の機嫌も悪くなり、痛いのは気のせいじゃないのかと言われ、本当に身も心もボロボロでした。ふと、こんな時に人は死ぬのかなぁと頭を過った事を憶えています。そしてもう癌かなと思って某大学病院の整形外科に行きました。
整形外科から皮膚科へ回され、初めて”掌蹠膿疱症”という耳慣れない病名を聞きました。そしてこの病気は治療法が無いので対処療法になります。金属アレルギーのパッチテストと耳鼻咽喉科で検査を受け、アレルギー反応が出ている金属を除いた歯に全部変えてくださいと言われました。何が何だかわからないまま言われた通り歯の治療をして扁桃腺摘出手術を受けました。ただ、胸や腰の痛みでなぜ扁桃腺の手術をするのか、なかなか夫の同意が得られず、手術の予約を一度キャンセルしました。次の手術の予約は半年先になってしまいました。
手術後しばらくして手足の皮膚が元に戻り、体の痛みも楽になったので掌蹠膿疱症は完治したと思った時には約3年たっていました。その後仕事のストレス、家事、子育て、お酒にたばこ…いつの間にかまた体に痛みが出てきました。手足には何もできていなかったので、掌蹠膿疱症だとは思わず内科医で体の痛みの相談をしたら、血のめぐりが悪いと言われ漢方薬を処方してもらいました。その間に禁酒禁煙し12年位は通いましたが痛みだけが一向に治まらず、疑わしい病気の検査を受けましたが、病名は分かりませんでした。もう何でもいいので、この痛みだけをとってほしいと頼んだら、軽いうつ病の薬をと言われたのですが、緑内障の私には処方出来ず、ペインクリニックを紹介してもらいました。
そんな中、舌の白板症の疑いで歯科医を紹介され白板症ではなかったのですが、重度の歯肉炎になっていて麻酔をかけ3回に分けて処置し、以前治療してから20年近く経っていた歯も新しいセラミックにすべて変えました。
ペインクリニックでは星状神経節ブロック療法を受け週2回10年通いましたが、胸や腰の激痛はやはり治まらなくて、医師からもう諦めてください!あなたの様な症状を熱心に研究している医師はこの日本にはいないと思いますよと言われました。もうずっと治る事は無いんだと思っていたら、6月頃またお臍がジュクジュクで掌にぽつんと水疱が出来ていました。ペインの医師に診せると、もしかしたら昔の掌蹠膿疱症が治っていないのではと言われ、医師とインターネットで掌蹠膿疱症を調べたら、骨関節の痛みもあると云うのと、治療もビオチン療法があるとがわかりました。ネットで病院を探し秋田・大阪を進められたけど遠いので断念し、そして新宿の現在の病院で掌蹠膿疱症の専門外来があると分かったので早速予約をとりました。
診察を受けて、一度は治ったと思っていた掌蹠膿疱症が、扁桃腺摘出後に喫煙した期間があった為に再燃してしまったのではないかと言われました。治療方法はいくつかあり、そしてこの病気は必ず治りますと言ってもらえたことに、心が熱くなり安心しました。そして、いないと言われた医師に会えて、本当に良かったと思っています。
現在はビオチンと生物学的製剤と顆粒球吸着療法の治療を受けて、痛みは随分楽になり病気である事を時折忘れそうになる事もあります。私にとって平成の30年は痛みの日々で、もっと早く診断がつき的確な治療を受ける事が出来れば、もう少し違った人生が送れたのではないかと思います。多くの医師にこんな症状を持った患者がいることを知ってもらい医師同士、患者同士が繋がり情報交換や専門病院の治療を受けられるようデジタル化が進む事と、家族や友人知人が理解できる場としてこのサイトが続くことを願っております。 2020.10.01