掌蹠膿疱症とは 

掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうは、手のひらや足のうらに、うみをもった小さな水ぶくれ膿疱のうほう、が繰り返しできる皮膚炎です。掌蹠膿疱症とは、てのひらと足のうら(足蹠)そくせきに、細菌などの病原体を含まない無菌性膿疱むきんせいのうほうが多発する皮膚炎です。水ぶくれのでき始めにかゆみ感じることが多く、手あれやみずむしではないかと思うかもしれません。しかし、ぬり薬をぬっても治らないことが多く、膿みをもった水ぶくれがくり返し生じるうちに、範囲が広がっていきます。

手のひらの膿疱(白)と水疱やかさぶた(赤茶色)

ほかの人に感染することはありません
水ぶくれ(水疱)や膿疱のなかに菌はいないので、他人に感染することは決してありません。ところが、掌蹠膿疱症が人々にあまり知られていないため、手足に水ぶくれや膿みがたくさんあると、驚いて避けられたり、うつるのではないかと嫌がられたりなど、心ない言動によって深く傷つくことがあります。それが心配で、常に手袋を手放せず、気分が落ち込んだりすることもあります。

痛くて歩けない、手が使えない、突然に胸の激痛におそわれることも
手足に水ぶくれや膿疱が多発すると、痛くて歩けない、洗顔や洗髪、買い物や料理もやりにくいなど、日常生活に大きな支障を及ぼします。それだけではありません。10~30%の方では、鎖骨や胸、背骨や腰骨などにも炎症をおこします。突然、胸の激痛におそわれ、狭心症や心筋梗塞を疑われることもあります。背骨や腰の痛みで仕事もできなくなることもあります。このように、掌蹠膿疱症は、健康に関する生活の質(health related quality of life: HR QOL)が大きく障害される疾患です。

➢ 皮膚と爪の症状
➢ 骨と関節の症状
➢ 掌蹠膿疱症は何でおこるのか 原因は?
➢ 合併する病気には
➢ 日本人に多いって本当ですか?
➢ 皮膚の膿疱と骨や関節の痛み どちらが先?
➢ 治るのですか?
➢ 何科にかかればよいのですか?

 

皮膚と爪の症状

掌蹠膿疱症の皮膚症状には、手のひらと足のうらの水ぶくれや(膿疱のうほう)その他のからだの部分におこる手足以外の皮膚症状、爪の症状の3つがあります

■手足の症状

掌蹠膿疱症に特徴的な症状が、手のひら(てのひら)掌掌掌)と足のうら(足蹠そくせき)の小さな水ぶくれ(小水疱しょうすいぼう)からできる(膿疱のうほう)です。

手足に膿疱ができる病気は他にもありますが、掌蹠膿疱症の膿疱には、特有といってもよい特徴があります。それは、まず、小さい水ぶくれ(小水疱)で始まり、ほどなくして水ぶくれの中央から白い膿みをもってくる、2段階で形成される膿疱であることです。これは、われわれ日本人タイプの掌蹠膿疱症の特徴らしく、炎症をおこすのは‘白血球’のしわざですが、初めに炎症をしかける白血球と、白い膿疱を成す白血球はっけっきゅうが異なるのです。(☞水ぶくれや膿疱の正体は? 膿疱ができるメカニズム

水ぶくれはとても小さいので、出来はじめのかゆみで気づくこともしばしばあります。白い膿疱になった後、しばらくすると乾いて茶色っぽいかさぶた(痂疲かひ)となり、かえって目立つようになります。

掌蹠膿疱症の掌蹠外皮疹とその分布

さらに数日を経て、その下の皮膚が回復してくると、周りの角質(白いカワ、鱗屑りんせつとよばれます)とともにめくれ上がってはがれ落ちます。はがれ落ちた後の皮膚は赤みを帯び(紅斑こうはん)、カサカサしています。
これが、手のひらや足のうらのあちらこちらで繰り返されるうちに、全体があかくガサガサした皮膚になり、膿疱とかさぶたとめくれかかったカワが混在するようになります。

角層がつみ重なって厚くなると、しなやかさを失い、ひび割れて痛みを生じます。皮疹が足全体に及ぶと、痛みでまともに歩けない状態となります。まるでガラスのかけらや画鋲の上を歩いているようだと表現されることもあります。

膿疱のうほう)膿疱膿疱膿疱が出現するペースを観察してみてください

常に新たな膿疱が出てくるという場合、扁桃や歯の病巣など、掌蹠膿疱法をひき起こしている原因がどこかに隠れていないか、調べる必要があります(☞掌蹠膿疱症は何でおこるのか 原因は?掌蹠膿疱症の治療法)。疲れた時にのどや歯肉の違和感や腫れがないか、風邪をひくと症状が悪化しないか、注意してみましょう。もしそれらの変化に気付いたら、主治医に伝えましょう。ただ漫然と塗り薬を続けても改善せず、例えばビオチンを何年も飲み続けながら皮膚症状が良くなったとしても、隠れた病巣を放置すると、のちにこれらが骨や関節の症状をひき起こすことがあります。皮膚症状は自然に軽快することがありますが、骨の炎症は進行性です。また、1日10~20本以上など、かなりの喫煙量ではありませんか?(☞掌蹠膿疱症は何でおこるのか 原因は?)
膿疱が周期的に出現を繰り返す現象も、掌蹠膿疱症でしばしばみられます。膿疱を作ろうとする免疫のみならず、膿疱を抑制しよう、治そうとする免疫が働いて、干渉しあっているようにみえます。4週間程度で膿疱の時期ときれいになる時期を繰り返すことが多いのですが、膿疱期が1~2週間ごとにあらわれるなど、周期が短い場合は、感染病巣を特にしっかり検索しましょう。原因が見つかれば、それを取り除くことにより、約半年のうちに良くなる兆しがあらわれ、1~2年のうちに6~8割の方がほぼ治ってしまいます。

精神的ストレスや過労はありませんか?

掌蹠膿疱症の膿疱は、免疫の状態にも影響されて出現します。精神的に大きなストレスが加わったとき、無理をして自分の体力の限界を超えるような働き方をしたときにも、膿疱が増える傾向がみられます。掌蹠膿疱症の病巣感染びょうそうかんせんでは、鼻やのど、歯の細菌といっても常在菌の一種のこと、通常なら大きな病原性がない菌です。常在菌叢のバランスが崩れた状態(dysbiosis)で過度のストレスや疲労など免疫が不安定な状態になると、これらの細菌に反応し、過剰な免疫反応が始まってしまうと推測されています(免疫寛容の破綻)。

さわることで悪化します

浮いてめくれてくる角層(鱗屑りんせつ)はうっとうしいだけでなく、乾いて硬くなり、立ったり歩いたりするたびに皮膚に刺さりこんで痛いため、はがして整えたくなるかもしれませんが、掌蹠膿疱症には、物理的な刺激を加えることで悪化する性質(ケブネル現象)があるので、絶対にやめましょう。( ☞「掌蹠膿疱症の治療」)。手のひら、足のうらの皮膚は、ほかの部位と比べて角層がとても厚く、スローモーションのようにゆっくり修復されます。しかし、手を加えてしまうと、元のように平らになりません。整えたい気持ちはグッと我慢、軟膏で常にしっとりさせておくか、亜鉛華軟膏で覆って保護と乾燥の防止を図り、自然に修復されるのを待ちましょう。軟膏を擦り込むのも厳禁です。(☞外用療法のコツ)

■手足以外の皮膚症状 ~掌蹠外皮疹~しょうせきがいひしん

肘や膝、腕やすね、時には頭皮やおしり、背部にかさかさした(紅斑こうはん)紅斑を生じることがあり、蹠外皮疹しょうせきがいひしんと呼びます。一見すると乾癬に類似していますが、乾癬と比較すると境界はやや不明瞭で浸潤(厚み)も軽度であり、日本人の場合、臨床的にも病理組織学的も、乾癬とは異なる皮疹です2)膿疱のうほうがみられることもあります。しばしば痒みを伴い、特に頭皮の症状は湿疹や毛嚢炎、おしりの症状は白癬症やカンジダ症(真菌症の一種)などとも鑑別が必要です。何か月前から続いていて、ぬりぐすりが効きにくいなどの情報も、診断のめやすとなりますので、主治医に伝えましょう。

掌蹠膿疱症の掌蹠外皮疹とその分布

爪の症状

掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうの症状が爪にあらわれると、爪の下に膿疱や凹みが出来たり、爪が壊れて変形したり、肥厚や黄色っぽく変色したり、爪がはがれて浮いてきたり、爪の下が厚くなってもり上がってきたりします。爪を作っている爪母そうぼ(爪のねもと)に膿疱がたくさん出来ると、爪が破壊され、重症の場合は爪がとれてしまうこともあります。

爪の下の膿疱白い膿みのほか、油染みのようにみえる

爪の下の(角質肥厚かくしつひこう)による変形

爪の破壊性変化痛みを伴う指先を使う作業がうまくできない

爪は、ほかの人の目に触れる場所であり、また、自分の目にも常に触れて気分が落ち込んだりするほか、層になってはがれた爪は髪の毛や服の線維を挟み込んだり、破壊されてしまうとコインなど薄いものがつかめないなど、生活上で思いのほか大きな支障をきたします。

これらも適切な治療でよくなります。困っていること、不都合を主治医に伝え、どんな治療があるのか、相談してみましょう。皮膚科の外来はどこも非常に混んでいて、聞きにくい状況かもしれません。そんな時には、待ち時間のうちに看護師さんに伝えておくのもよいでしょう。「爪がこんなふうになり○○で困っている、次回また相談させてほしい」など、主治医と患者のあいだの懸案事項としてあげておくのも一つの方法です。主治医も治療の選択肢を調べ、あなたに合う治療法をゆっくり考えることができます。

治らない病気ではありません

掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうは、治らない病気ではありません。大切なことは、正しく診断すること、病気が長引かないうちに、悪化させている原因を見つけ、それを取り除いたうえで、適切な治療をすることです。悪化因子を取り除くと、半年から1年かけて徐々に膿疱のうほうが出なくなり、治ってしまうことが多いのです。(☞治療法について)

骨と関節の症状 ―掌蹠膿疱症性骨関節炎― しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえん

掌蹠膿疱症の1030%の方では、骨と骨、骨と腱が接するところ(関節や付着部ふちゃくぶ)や、骨そのものに炎症がおきて激しい痛みを伴う「掌蹠膿疱症性骨関節炎」を合併します。

手足の膿疱のうほうとほぼ同時期におこることが多いのですが、皮膚の症状が軽くなってから突然発症することもあります。逆に、患者さんによっては、こうした関節症状が皮膚症状よりも先にあらわれ、診断に苦慮することがあります。

■特徴的な(胸鎖関節炎きょうさかんせつえん

特徴的な炎症部位として、胸骨と鎖骨、胸骨といちばん上の肋骨(第一肋骨)、上下の胸骨の結合部があげられます。掌蹠膿疱症性骨関節炎の方の約80%でこの部位に炎症がおこり、胸鎖関節炎きょうさかんせつえんと呼ばれています。

掌蹠膿疱症性骨関節炎

首の付け根から胸に突然の激痛が走るので、狭心症や心筋梗塞、逆流性食道炎などと間違えられることもあります。呼吸するたびに動くので、呼吸することさえつらく、咳やくしゃみでは激痛となります。寝返りやあおむけの姿勢は、鎖骨・肋骨と胸骨との結合部にストレスがかかります。寝返りするたびに痛みにおそわれるので、ソファーに寄りかかったままウトウトするような生活が何か月も続いている方が少なくありません。
X線写真を撮っても、すぐには骨の変化がおこらないために、診断がつかないことがとても多いのです。

■掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)とSAPHO症候群

掌蹠膿疱症性骨関節炎は滑膜炎・ざ瘡(にきび)・膿疱症・骨化過剰症・骨炎症候群(SAPHO症候群)と呼ばれることがあります。SAPHO症候群とは、にきびの重症型に伴う骨関節炎、全身の骨に骨炎をくり返す小児に多い疾患(慢性再発性多発性骨髄炎)、硬化性下顎骨骨髄炎に伴う骨炎、腸炎に伴う脊椎炎など、同様に付着部炎と多発性の骨炎をきたす50種類もの疾患の総称として用いられています。そして、日本人はもとより、海外例でも、SAPHO症候群の中で掌蹠膿疱症に伴う掌蹠膿疱症性骨関節炎が最も多くを占めます。
しかし、元になる疾患には特徴があり、特に日本人の掌蹠膿疱症の場合、60~80%で病巣感染が発症契機となっていて、この特殊ともいえる特徴が治療上の重要な要素となります。この最も大切な要素を見落とさぬよう、適切な治療の結びつけるように、SAPHO症候群としてひとまとめにせず、掌蹠膿疱症性骨関節炎と、きちんと病名でして取り扱うことがとても重要です。
SAPHO症候群の治療も未だ確立されていません。もしかすると、一つ一つの疾患を分けて分析することで、それぞれに優先される治療が明らかになるかもしれません。

SAPHO症候群には50種類もの異なる疾患が含まれる

■くびや背中の痛み、腰痛も要注意

掌蹠膿疱症性骨関節炎しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえん(PAO)の骨や関節炎の部位は、じつに多彩です。くびや背骨、腰骨脊椎炎 、仙腸関節炎せきついえん   せんちょうかんせつえん、肩(肩峰関節炎けんぼうかんせつえん)、足の付け根(股関節炎こかんせつえん、手足の骨や関節(末梢関節炎まっしょうかんせつえん)にも炎症を生じることがあります。脊椎は、体重を支える骨であり、炎症で骨が弱くなると骨折することもありますので、ただの腰痛と軽く考えずに、主治医に伝えてください。
また、足のうらや踵が痛いという時も、毎日よく使う大きな腱が骨に入り込む接着部分の炎症かもしれません(付着部炎ふちゃくぶえん)。

竹様脊椎 bamboo spine (単純X線画像) 

頸椎炎をきたした結果、頸椎の骨がつながり、竹様脊椎(bamboo spine)となっている。

末梢関節炎 足首と足の甲全体が腫れている

さらに、掌蹠膿疱症による骨炎は、腕やもも(大腿)の骨にもおこります(長管骨の無菌性骨髄炎ちょうかんこつむきんせいこつずいえん)。骨の中の炎症は激痛を伴います。ここでも確かな診断が重要で、癌がどこかにあって骨に転移した転移性癌、通常の細菌や結核菌などによる骨の感染症などとの鑑別が必要です。

もも(大腿)の骨に炎症がある無菌性骨髄炎(骨シンチグラフィー)

■どのような検査をすればよいのでしょうか
骨関節炎の検査には次のようなものがあり、必要に応じて組み合わせ、診断と、現在の炎症の状況を把握し、ほかに痛みを生じる骨の病気が合併していないかを調べ、いま、どの治療が必要かを総合的に判断します。

血液検査:炎症の程度をみたり、関節リウマチや膠原病など関節炎をおこす他の疾患がないか調べます。また、自己免疫性甲状腺炎や糖尿病、高脂血症などの併存症の有無も検査します。

竹様脊椎 bamboo spine (単純X線画像) :通常の骨のレントゲン検査のことで、骨に変化をきたしているか、年齢からくるほかの腰痛の原因がないかなどがわかります。

STIR画像または脂肪抑制画像を含む単純MRI :MRIはPAOの骨病変を検出するのに最も有用な画像検査です。STIR画像や脂肪抑制画像では、炎症の部分が骨シンチと同様の精度で分かるほか、より詳細な解剖学的部位や形状まで明らかとなります。T1強調画像では、骨びらんや骨増殖といった炎症による骨の形状の変化や、骨への脂肪沈着や骨強直など過去の炎症の痕が分かります。T2強調画像も炎症をみる撮影法ですが、PAOの炎症を把握するにはSTIRまたは脂肪抑制画像が必要です。加えて、MRIは放射線被爆が無いのも利点です。


左:MRI脂肪抑制画像 炎症をおこしている部分がむくんで白くみえる
右:MRI T1強調画像 脊椎の骨が骨折でつぶれたりへこんだりしている

骨シンチグラフィー:体の複数の部分に痛みがある場合、全身の骨の炎症部分を一度に把握することができます。ただし、形状の変化はわかりません。

超音波エコー検査:手足や肘、膝などの関節炎では、炎症の初期から血管が増えているのがわかります。腫れや、骨が炎症で増殖している様子もわかり、被爆がなく、手軽にできる利点があります。

痛みの特徴 動き出す時に痛い‘安静時疼痛’あんせいじとうつう
これらの痛みは、長時間安静にしたあと、動き出すときに最も強い痛みが襲い、‘安静時疼痛’あんせいじとうつうと呼ばれます。朝起きるときベッドから起き上がれない、しばらく身動きがとれない、同じ姿勢で座っていると痛くなるなどです。しばらくゆっくり動いていると痛みが軽くなるという特徴をもつために、周囲の方々の誤解をうけ‘仮病や怠け病’だと勘違いされることがあるのです。患者さん本人は死ぬほど痛くて呼吸もままならないのに、周りの人からの言葉で、何とも悔しくやるせない気持ちになるのです。

掌蹠膿疱症 しょうせきのうほうしょうは何で起こるのか、原因は?

日本人タイプの掌蹠膿疱症の多くに、発症に関係する重要な因子があります。病巣感染の場合、原因を取り除くことにより、皮膚症状は治ってしまうことが多い疾患でもあります。

■掌蹠膿疱症の多様性と病名をめぐる歴史

掌蹠膿疱症が初めて提唱されたのは1930年ごろのこと、その後、タイプの異なる掌蹠の膿疱症をめぐり、30年にわたる議論があり、1961年に掌蹠膿疱症という病名が決まりました。その結果、この中にはタイプの異なる掌蹠膿疱症が含まれることになり、特に病巣感染の性質を色濃く有する日本人タイプは、治療に関する世界的な議論から外れ、治療方針確立の遅れから、結果的に今も多くの脊椎炎重症例を経験するに至っています。

爪の周りに膿疱を生じるタイプであるアロポー稽留性肢端皮膚炎に続き、1930年、英国のBarber HWらが「掌蹠に膿疱を呈する膿疱性乾癬の四肢限局型」を1つめのタイプとして提唱しました。臨床症状は我々の掌蹠膿疱症と類似するものですが、四肢に乾癬を伴い、病理所見も乾癬や膿疱性乾癬と同様です。こちらが欧米人にみられる掌蹠膿疱症です。ほどなくして1934~1935年、米国のAndrews GCらが「外用療法が無効であるが、扁桃や歯科と関連が深く、扁桃摘出や歯科治療で治癒する掌蹠の膿疱症」として小水疱から始まる病巣感染タイプを発表しました。これが日本人の掌蹠膿疱症の多くを占めるタイプです。
下記に示すAndrewsの教科書アジア版の中に、膿疱性乾癬型(右上段)と小水疱を伴う病巣感染型(右下段)が比較されています。

様々なサイトカインやBarber HWらによる膿疱性乾癬型は、初めから白い膿疱で、病理所見でも水疱がなく、四肢に乾癬がみられるものです。
Andrews CGらによる病巣感染型は、初めは透明な小水疱で、病理所見でもはっきりと水疱がみられ、その後、小水疱の頂点から膿疱化していくもので、乾癬はまず合併しません。

すなわち、この2つは全く異なる機序で発症するのですが、結果的に掌蹠の無菌性膿疱を呈することから、両者とも掌蹠膿疱症と呼ばれています。

■掌蹠膿疱症が今後めざすべき方向性

掌蹠膿疱症は日本人に最も多い疾患とされています。日本人における掌蹠膿疱症の有病率は推定13.5万人、日本には数多くの掌蹠膿疱症患者さんが存在し、機能部位である手足の膿疱に大変苦しんでいます。骨や関節の炎症は激痛を伴い、日常生活を奪われる方も多いことを考え、これまでのデータの集積を今日の免疫学の進歩に照らし、治療の確立と新たな治療法の開発に向けて動き出しています。

一方で、欧米の限局性膿疱性乾癬型の掌蹠膿疱症も慢性難治性疾患であり、おそらく関節炎を併発し、それらはSAPHO症候群と呼ばれています。膿疱性乾癬は難治性であり、全身型(汎発型)膿疱性乾癬は我が国において指定難病となっています。

生物学的製剤(注射薬)や低分子薬(内服など)などの新たな全身療法の開発が急ピッチで進められる今日、双方が掌蹠膿疱症の多様性を受け入れ、お互いのタイプ(亜型)にも注意を払い、他方からヒントを得て、どちらかのタイプに特有の治療か、どちらにも有効な共通の治療か、安全性と有効性を整理していくことが望まれます。

■日本人タイプの掌蹠膿疱症

これまでも我が国の皮膚科医や耳鼻科医により病巣感染について検討され、複数の臨床研究および基礎研究の論文があります。そこで、Andrews CGら、先人らの記述を検証してみると、日本人の掌蹠膿疱症は、確かに、その多くが外用療法や光線療法など通常の皮膚炎治療では治りきらず、8割程度の方に歯科領域や扁桃、副鼻腔に無症状の感染病巣が見い出され 1)、それを治療することにより、ほぼ治ってしまう例が多いことが分かります 1-4)。病巣治療による皮疹の軽快には時間がかかるため、病巣治療終了後に静菌的とよばれる弱い抗菌薬の助けを2~3か月借りて、病巣治療後ほぼ1年の受診で区切ってみても、60%以上の方が著明に改善するか皮疹が消えてしまいます。すなわち、日本人の掌蹠膿疱症は、Andrews CGが提唱したタイプが多いということになります。
また、病巣が何も見つからない、過剰な免疫のみで生じていると思われる例も存在し、日本人例の中にも多様性があることがわかります。しかし、病巣のない症例も、日本人例では小水疱から始まり、臨床的および病理学的に乾癬とは異なるタイプであり、やはり欧米に多い膿疱性乾癬の限局型とは異なるのです。

もう一つ、掌蹠膿疱症の治療が進んでこなかった理由は、この、慢性かつ無症状の病巣が引き金をひく‘病巣感染’びょうそうかんせんのメカニズムが今も分からないことです。しかしながら、掌蹠膿疱症における病巣扁桃の研究は着実に蓄積されており、掌蹠膿疱症の方の扁桃細胞は常在菌の一種であるαレンサ球菌により自動的に炎症がひき起こされてしまい、様々なサイトカインや 5)、白血球を呼び寄せるケモカインが発現されることが分かっており、これらの細胞が皮膚に遊走すると考えられています 6)
それでも、現在のところ原因病巣は確定する検査もなく、炎症症状に乏しいため、耳鼻科、歯科の先生方も、これら無症状の病巣をどう扱ってよいのか、分かりにくいのです。ただ、原因病巣を治療すると多くの掌蹠膿疱症が軽快するということが分かっており、治癒を目指す治療を考えるのであれば、可能な病巣治療を優先すべきです。

1) 小林里実. 治療に難渋する病態への対応 ④掌蹠膿疱症の診断と治療. 皮膚臨床2018; 60(10):1539~1544
2) Clinical Characteristics of Japanese Patients with Palmoplantar Pustulosis. Yamamoto T.
3) 山本洋子, 他: 掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性について.日皮会誌2001; 111: 821-826
4) Murakata H, et al. Increased interleukin-6, interferon-gamma and tumor necrosis factor-alpha production by tonsillar mononuclear cells stimulated with alpha-streptococci in patients with pustulosis palmaris et plantaris. Acta Otolaryngol 1999; 119:384-91
5) Harabuchi Y, Takahara M. Pathogenic role of palatine tonsils in palmoplantar pustulosis:A review. J Detrmatol 2019; Sep 25. doi: 10.1111/1346-8138.15100
6)Clin Drug Investig. 2019 Mar;39(3):241-252. doi: 10.1007/s40261-018-00745-6.

■掌蹠膿疱症の発症や悪化に関わる因子

掌蹠膿疱症の原因には分からない点も多く残されていますが、喫煙、症状が感じられない程度の扁桃炎や歯周炎や慢性副鼻腔炎(病巣感染びょうそうかんせん)、頑固な便秘や過敏性腸症候群などが発症に深く関わっている例が多くみられ、ストレスをきっかけに始まります。

喫煙

掌蹠膿疱症の方の喫煙率は人種を問わず高く、どの統計でも60~80%におよびます。1,3)、喫煙が掌蹠膿疱症にどのように関わっているのかは不明な点が多いのですが、禁煙のみで治ることはむしろ稀でも、禁煙することで症状が軽くなったり、治療効果の向上がみられる傾向も確かに認められ4)、喫煙が症状の悪化に関わっているのは確実と言えそうです。

喫煙と免疫の研究も進んできました。喫煙は掌蹠膿疱症の発症にも重要な、インターロイキン-17 (IL-17)などの炎症物質を増加させたり、炎症をおこすリンパ球 Th17を増加させたり、掌蹠膿疱症の発症・悪化因子である歯周炎を悪化させたりなど、炎症を助長するほか、手のひら、足のうらの水膿疱ができる汗腺の出口にニコチン性アセチルコリン受容体が多く発現しているなど 5)、メカニズムに関係しそうな事象が少しずつ分かってきました。

1) Akiyama T, et al. The relationships of onset and exacerbation of pustulosis palmaris et plantaris to smoking and focal infections. J Dermatol. 1995; 22: 930-934
2) 橋本喜夫ら.旭川医科大学最近17年間の掌蹠膿疱症の統計.扁摘術の湯構成の検討も含めて.臨皮2006; 60: 633-637
3) 加瀬貴美ら.札幌医科大学附属病院皮膚科で経験した掌蹠膿疱症66例の統計学的検討.日皮会誌2012; 122: 1375-1380
4) Michaëlsson G, et al. The psoriasis variant palmoplantar pustulosis can be improved after cessation of smoking. J Am Acad Dermatol. 2006 Apr;54(4):737-738
5) Hagforsen E, Edvinsson M, Nordlind K, Michaëlsson G. Expression of nicotinic receptors in the skin of patients with palmoplantar pustulosis. Br J Dermatol 2002;146: 383-391

病巣感染(扁桃炎/歯周炎/副鼻腔炎など)

体のどこかに症状がほとんどない慢性の炎症がある場合、これが引き金となって体の別の部位に別の病気が引き起こされることがあり、これを「病巣感染びょうそうかんせん」といいます。
掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうは、病巣感染か深く関わる代表的な疾患で、無症状の扁桃炎(病巣扁桃) びょうそうへんとう1,2)、歯の根元や周囲に潜む無症状の歯周炎(歯性病巣しせいびょうそう:根尖性歯周炎と辺縁性歯周炎  2,3)、慢性副鼻腔炎、上咽頭炎など、ふつうは治療の必要がないような状態が、発症の契機になっている例が多くみられます。

これらの病巣の原因菌は常在菌の一種であり、たとえば歯周病菌も通常は歯周炎をおこすだけにとどまりますが、掌蹠膿疱症をおこしやすいタイプの人には、過剰な免疫反応が誘発され、掌蹠膿疱症の発症や持続につながってしまうと推測されます。

体のどこかに症状がほとんどない慢性の炎症がある場合、これが引き金となって体の別の部位に別の病気が引き起こされることがあり、これを「病巣感染」といいます。掌蹠膿疱症は、病巣感染か深く関わる代表的な疾患で、無症状の扁桃炎(病巣扁桃)1,2)、歯の根元や歯肉の無症状の歯周炎(歯性病巣:根尖性歯周炎、辺縁性歯周炎、智歯歯周炎)2,3)、慢性副鼻腔炎、上咽頭炎など、ふつうは治療の必要がないような状態が、発症の契機になっている例が多くみられます。これらの病巣の原因菌は常在菌の一種であり、たとえば歯周病菌も通常は歯周炎をおこすだけにとどまりますが、掌蹠膿疱症をおこしやすいタイプの人には、過剰な免疫反応が誘発され、皮膚や骨等離れた臓器に炎症が及び、掌蹠膿疱症の発症や持続につながってしまうと推測されます。

頑固な便秘や過敏性腸症候群など 腸も関係する?

日本と並んで掌蹠膿疱症の発症が多いスウェーデン人の患者さんでは、セリアック病というグルテン過敏性腸症候群が18%にみられます。グルテン過敏性腸症候群そのものが日本人にはほとんどみられないと考えられていますが、腸の調子について掌蹠膿疱症の患者さん全員に伺ってみると、頑固な便秘がある、すぐに下痢をするという方が少なからずいらっしゃり、これらを治療すると皮膚や関節の症状がやわらぐことがあります。
腸内細菌は様々な慢性炎症性疾患に関わっている可能性が推測されていますが、科学的にはほとんど解明されていない分野です。腸の免疫については潰瘍性大腸炎やクローン病で研究され、IL-17は重要ですが、乾癬などと異なり、これら炎症性腸疾患の方にIL-17をブロックする生物学的製剤を投与すると症状がむしろ悪化するなど、一筋縄ではいきません。腸の免疫は謎だらけ、特定の腸内細菌を過剰に摂取するなどの自己判断は禁物です。

歯科金属アレルギー

歯科金属などの金属アレルギーとの関連も指摘されています。しかし、歯科金属の除去だけでは治らなかったという方をとても多く経験します。また、金属除去と同時に歯性病巣の治療を行う例もあり、どちらが関係していたのか分からないことが多くありました。病巣の治療と歯科金属の除去を厳格に区別して行うようにすると、金属アレルギーが関係していた例は5%程度であったのですが1)、最近、歯科金属アレルギーを専門とする皮膚科医による検討結果が発表され、金属除去と同時に歯性病巣の治療を行っていた例が非常に多く、分析すると歯科金属アレルギーはそれほど大きな要因ではないので、むやみに金属除去をするのは慎むべきとの見解が出されました2)

1) 小林里実. 治療に難渋する病態への対応 ④掌蹠膿疱症の診断と治療. 皮膚臨床2018; 60(10):1539~1544
2) Masui Y, et al. Dental metal allergy is not the main cause of palmoplantar Pustulosis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2019 Jan 17. doi: 10.1111/jdv.15434

合併する病気には

掌蹠膿疱症しょうせきのうぼうしょうが皮膚だけの病気ではありません。
無症状の病巣扁桃びょうそうへんとうや副鼻腔炎や歯性病巣しせいびょうそうが発症に関わるほか(☞掌蹠膿疱症しょうせきのうぼうしょうは何で起こるのか、原因は?)骨や関節の炎症(☞骨と関節の症状-掌蹠膿疱症性骨関節炎しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえんしょう)掌蹠膿疱症性骨関節炎-)掌蹠膿疱症の一部です。ほかにも、糖尿病や自己免疫性甲状腺炎しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえん、コレステロールや中性脂肪が高くなる脂質異常症、便秘や下痢といった腸の状態も注目されています。

■糖尿病と自己免疫性甲状腺炎があれば、専門医を受診し良好な状態を保ちましょう

自己免疫性甲状腺炎とは、自己抗体により自分の甲状腺を攻撃してしまうバセドウ病(甲状腺機能亢進症)や橋本病(甲状腺機能低下症)のことです。糖尿病や自己免疫性甲状腺炎の状態が悪いと、掌蹠膿疱症がなかなか良くならない場合があります。掌蹠膿疱症の合併症を調べる血液検査で初めて気づく患者さんも稀ではありません。

わが国の掌蹠膿疱症における糖尿病の併存率は10%程度1,2)で、特に多いとは言えませんが、スウェーデン女性の掌蹠膿疱症患者では28%3)と高率であったとの報告もあります。

糖尿病がどのように掌蹠膿疱症の悪化にかかわるのか、まだ分かっていません。喫煙と糖尿病、糖尿病と歯周炎、喫煙と歯周炎は密接に関わることが知られ、互いに症状を悪化させると考えられるほか、たとえば、重症の歯周炎では絶えず歯周病菌の一部が血中に入りこみ、活性化した血中マクロファージが脂肪細胞に蓄積し、TNF, IL-6などが産生され、脂肪細胞のインスリン抵抗性をもたらして糖尿病のリスクを上げるのではないかと推測されています。4)

自己免疫性甲状腺炎の併存率は、スウェーデン例では12%3)と報告されていますが、本邦例における併存率は4.4~5.1% 1,2)と頻度は決して高くありません。しかし、甲状腺炎が悪化すると掌蹠膿疱症の皮膚症状も悪化するという例があることと、自己免疫性甲状腺炎の合併例では病巣治療を行っても治りきらないことがあり、今後の検討課題となっています。甲状腺や下記に述べる腸管は、扁桃や上咽頭などの口腔粘膜組織、唾液腺とともに、外的病原体から守ったり調和したりする免疫組織である粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue: MALT)に含まれるとされ、MALTと扁桃病巣感染との関連性も推測されています6)

■掌蹠膿疱症では脂質異常症の合併が多いようです

掌蹠膿疱症の患者さん全員に血液検査を行うと、コレステロールや中性脂肪が高値を示す脂質異常症を伴う患者さんが多くみられます2)。乾癬と異なり、BMIが高くない掌蹠膿疱症の患者さんでなぜ高脂血症が多いのか、そのメカニズムは分かっていませんが、慢性の炎症と関連があるかもしれません。高血圧の合併頻度は11.9 ~25% 1,2)とばらつきがあり、今後の検討課題です。

また、ストレスが掌蹠膿疱症の発症や悪化に大きく関連するようです。うつなどの精神疾患も掌蹠膿疱症を治りにくくする要因と推測され、必要であれば診療内科や精神科に相談しましょう。

■便秘や過敏性腸症候群と整腸

腸内細菌の乱れ(dysbiosis)も掌蹠膿疱症との関連が注目されています。腸内細菌と免疫の研究はまだ始まったばかりで、医学的な見解に乏しい分野と言わざるを得ませんが、腸はテニスコート1.5枚分の面積で多様な腸内細菌が活動する場所です。治療や食生活の改善により良好な状態にコントロールするよう心がけましょう。
これら腸内環境が検討されるようになったのは、スウェーデン人の掌蹠膿疱症患者でグルテン過敏症など腸炎の合併率が高い3)と報告されたことがきっかけです。本邦例でも注意して聞いてみると、頑固な便秘や過敏性腸症候群、そこまでいかなくても下痢と便秘をくり返す患者さんも比較的多くみられます。これらを治療することにより、皮膚症状や骨関節症状の改善がみられることが少なくありません。5)

腸内細菌と関節炎の関係は、クローン病などの炎症性腸疾患のほか、関節リウマチ患者の腸から採取した細菌をマウスに植え付けると関節炎をきたすことなどから推測されています。7,8)

1) Hiraiwa T, Yamamoto T: Comorbidities of Japanese patients with palmoplantar pustulosis: a report from a single centaer, Int J Dermatol 2018; 57: e40-e41.
2) 宮田龍臣,中川秀樹, 岡本俊宏, 小林里実:本邦における掌蹠膿疱症患者の併存疾患,第116回日本皮膚科学会総会P-324
3) HagforsenE, et al: Women with palmoplantar pustulosis have disturbed calcium homeostasis and a high prevalence of diabetes mellitus and psychiatric disorders: a case-control study. Acta Derm Venereol 2005; 85: 225-232.
4) 西村英紀、谷口 中、磯貝興久ほか:歯周疾患と糖尿病の相互関係.綜合臨牀2007; 56: 2854-2866.
5) 小林里実:治療に難渋する病態への対応③掌蹠膿疱症の診断と治療,皮膚臨床, 2018; 60: 1539-1544
6)Harabuchi Y, Takahara M. Recent advances in the immunological understanding of association between tonsil and immunoglobulin A nephropathy as a tonsil‐induced autoimmune/inflammatory syndrome. Immun Inflamm Dis. 2019; 7: 86-93
7)Brusca AB, et al: Microbiome and mucosal inflammation as extra-articular triggers for rheumatoid arthritis and autoimmunity. Curr Opin Rheumatol 2014; 26: 101-107.
8) Maeda Y, et al: Dysbiosis contributes to arthritis development via activation of autoreactive T cells in the intestine. Arthritis & Rheumatol 2016; 68: 2646-2661.

日本人に多いって本当ですか?

本当です。掌蹠膿疱症は日本人とスウェーデン人に多いようです。

中国人や韓国人にも比較的多くみられます。

ある疾患が人種によってなりやすさに違いがあるのは、おそらく、HLA (Human Leukocyte Antigen、ヒト白血球抗原)という、白血球の遺伝子タイプの違いが関係していると推測されています。HLAは、臓器移植の際に拒絶反応を起こすか否かを決めたり、菌やウイルスに対してどのような免疫反応の指令を出すかを決めたりする、免疫反応の多様性を生み出している遺伝子の部分です。

掌蹠膿疱症になりやすいHLAタイプは、まだ調べられていません。親子や兄弟姉妹、親戚にも掌蹠膿疱症の人がいるという方は5~6%程度にみられますが、HLAは子孫に受け継がれる免疫の体質のようなもの、しかも非常に多くのパターンが組み合わさっており、掌蹠膿疱症が子どもに遺伝するのではないかとの心配は不要です。

一方で、掌蹠膿疱症の方に多くみられるHLAタイプを見い出すことで、今後、なぜそのような免疫反応が起きてしまうのか、なぜ日本人の掌蹠膿疱症は病巣感染が発症契機になる例が多いのか、掌蹠膿疱法のタイプの違いが明らかになる可能性があります。(☞掌蹠膿疱症はなぜ起きるのか)

免疫反応
●掌蹠膿疱症の男女比はおよそ1:2、発症は30~50代の女性に多い傾向があります

我が国のいろいろな施設の統計でも、中年の女性に多い傾向が指摘されてきました。2010年度に行われた全国の国民健康保険組合に請求された掌蹠膿疱症の病名をもとに行った調査でも、男女比はおよそ1:2 5)、発症は30~50代  1,2)に多いようです。診断がおおよそ合っていればという前提ですが、日本にはおよそ13万6千人の掌蹠膿疱症患者さんがいると推測され、有病率は0.12%と試算されています。小児での発症は稀です。

1) 藤城幹山ら.:当科における過去3年間の掌蹠膿疱症111例の統計学的検討.日皮会誌2015 ; 125 : 1775-1782.
2) Kubota K, et al. Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database. BMJ Open 2015; 5: e006450. Doi:10.1136/bmjopen-2014-006450
3) Akiyama T, et al. The relationships of onset and exacerbation of pustulosis palmaris et plantaris to smoking and focal infections. J Dermatol 1995; 22: 930-934.

皮膚の膿疱と骨や関節の痛み、どちらが先?

ほぼ同時期に出現することが多いとの報告があります。そして、重要なのは、骨や関節の痛みで始まることも決して稀ではないことを知っておくことです。

皮膚症状と骨関節症状掌蹠膿疱症性骨関節炎しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえんは同じ時期に起こることが多い

Sonozaki Hらの集計によると、鎖骨、胸骨、肋骨に炎症をきたす胸鎖関節炎きょうさかんせつえんをはじめ、肩や脊椎など様々な部位の骨と関節の炎症がみられ、80%が皮膚症状先行の乾癬かんせん *と違い、掌蹠膿疱症の70%で膿疱と骨関節炎は前後2年以内に生じていると報告されています。最近になって、皮膚症状の先行が多いとの報告も出てきました。さらに、骨関節炎が何年も先行する例もみられます。膿疱があれば、胸や腰の痛みが掌蹠膿疱症性骨関節炎かもしれないと疑う糸口になりますが、背中の痛みや腰痛のみで発症した例では、正しい診断に至るまでに何年も費やすことがあるのです。
必要なのは、‘もしかして’と疑ってみることです。急な動作の直後に激痛を生じるぎっくり腰などと違い、とくに物理的な刺激は加わっていないのに突然激痛になった、大きなストレスの後に痛みが始まったなどは注意が必要です。
そして、痛みの性質をよく観察し、もし、朝起きた時に最も痛い‘安静時疼痛あんせいじとうつう’である場合には、主治医に伝えることです。さらに、痛みは消えたりぶり返したりすることが多く、初めは症状がはっきりせずに診断がつきにくいことも知っておいてください。診断確定には画像診断が必要になります。

治るのですか?

掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうは治りうる疾患です。ただし、皮膚の症状はどんなに長期間患っても消えてしまいますが、骨の症状は早期に治療しないと治りきることが難しくなっていきます。

■掌蹠膿疱症の皮膚症状は治ります

多くの場合、治ります。日本人の掌蹠膿疱症患者さんの多くに、発症のきっかけや悪化に関わる因子があることが以前より知られており、これらの因子が見つかり、それを取り除くことができる場合は、1~2年のうちに治ったり、カサカサ程度におさまったりします。
治るまでの平均期間について、5年、7年、13年など、いろいろな施設で統計が出されてきました。悪化因子を取り除く治療にこだわらなかった場合、治りにくいことを示すデータです。
日本人の場合、掌蹠膿疱症の患者さんの多くで、扁桃、歯周組織、副鼻腔などの無症状の炎症が関係していること(病巣感染びょうそうかんせん ※1)が分かってきました(☞掌蹠膿疱症は何でおこるのか、その原因は?。病巣が見つかれば、それを治療することで、60~80%以上の方は治癒またはほとんど気にならない状態まで治ってしまいます。病巣治療終了後、半年のうちに改善の兆しがみられ、症状のくすぶりを伴いながら1~2年でよくなります。

知っておきたい注意点が3つあります。1つは、掌蹠膿疱症の場合、無症状の病巣でも原因病巣であること、二つめは、病巣でおこっているのは感染症ではなく過剰な免疫反応なので病巣治療後すぐに治るわけではないことです。しかし、半年から1年みれば、その病巣が発症に関わっていたならば症状の改善が見えてきます。非常に治りにくい方もいらっしゃるので、病巣治療終了ごろより静菌的な抗菌薬を併用することがあります。これらの抗菌薬は、抗炎症作用を併せ持つタイプの薬です。3つめは、歯性病巣治療中は症状が悪化することです。原因病巣を刺激することで、骨関節炎の痛みが増強したり、皮疹が拡大したりなどがしばしばみられます。悪化を最小限に抑えるために、歯科治療は速やかに進めるのが理想的です。悪化の程度によっては、抗菌薬などの治療を加えることがあります。
これらを知らないと、治療するべきかどうかについてご自分が本当に望む判断ができなかったり、病巣治療後も続く症状をみて不安になったり、効果を待たずに高額な歯科金属除去療法を受けたりなどが起こります。

掌蹠膿疱症における病巣は、痛みや腫れなどの症状がほとんど無いために、ふつうは治療の対象にならず、見過ごされるものです。なぜ一部の方々に、通常なら問題にならない程度の病巣が掌蹠膿疱症の引き金を引くのか、これも未だ解明されていません。
しかし、手足に次々に膿疱が出現してははがれ落ちる掌蹠膿疱症は、日常生活で精神的、身体的にとても大きな負担となりますので、まずは悪化因子がないか、これまでの経過を振り返ったり、歯科でX線撮影をもとに歯の根元のうみや歯槽膿漏のチェックを受け、その結果を皮膚科医に伝えるとスムーズに進みます。下痢や便秘、比較的稀ですが金属アレルギー(歯の詰め物など)が悪化因子であることもあります。
悪化因子が見つかれば、それを除去することで、症状が良くなる場合が多いのが掌蹠膿疱症です。禁煙だけでは治りませんが、タバコも関連が深く、治療効果に影響しますので、禁煙も大切です。

何も悪化因子が見つからない場合もあります。また、悪化因子を取り除いても治りきらない場合もあります。その様な患者さんには、紫外線療法、内服療法、注射薬など、治癒させる治療ではありませんが、過剰に働く免疫を抑えて症状を改善に導く治療があります。今後も新たな薬の開発が進む見通しですので、主治医と相談しながら、ぜひ前向きな気持ちで、ご自身の治療に積極的に取り組んでいきましょう。

※1 体のどこかに慢性の炎症を抱えていた場合、これが引き金となって体の別の部位で何らかの病変(ここでは掌蹠膿疱症)が引き起こされること。全く無症状の病巣からひき起こされる他の疾患に、病巣扁桃によるIgA腎症がある。

各治療の詳細は「掌蹠膿疱症の治療法」をご参照ください。

■骨の炎症が長引くと治りきらなくなります

掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-ostitis: PAO)は、関節リウマチのように機能障害をきたすことは稀であり予後良好な疾患であるされてきました。しかし、初めは胸鎖関節炎のみであった患者さんが、何年かを経て脊椎炎をきたし、ビオチンのみ長期服用するうちに、炎症によって骨の増殖がおこり上下の椎骨同士がくっついて一本の竹のようになり曲がらなくなることもあります(bamboo spine)。しなやかさを失った脊椎は圧迫骨折をきたしやすくなります。また、中国から報告されたPAOを含むSAPHO症候群143例の中国のコホート研究2)では、治療薬を中止すると骨や関節の炎症が再燃するとの記述がみられます。おそらく、病巣感染などの原因がある場合は、それらを取り除かないと、たとえ皮膚症状は治ってしまっても、骨の炎症が進行することが考えられます。病巣治療後、骨関節炎に対しては、多くの方で治療が必要になりますが、炎症が完全に消失し、軽快する方も少なからずいらっしゃいます。

皮膚は再生能力に富む臓器ですので元に戻りますが、骨の破壊や変形を来たすと元に戻らず、後遺症を残してしまいます。掌蹠膿疱症性骨関節炎の治療も皮疹と同様で、扁桃や歯の病巣感染によるものが多く、日本人の場合、病巣を放置すると骨関節症状が進行する恐れがあることも知っておく必要があります。

1) Sonozaki H, Mitsui H, Miyanaga Y, et al: Clinical features of 53 cases with pustulotic arthro-ostitis. Ann Rheum Dis, 1981; 40: 547-553
2) Li C, Zuo Y, Wu N, et al: Synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis and ostitis syndrome: a single center study of a cohort of 164 patients. Rheumatol, 2016; 55: 1023-1030

何科にかかればよいのですか?

まず、掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうであるかどうか、確実な診断が重要です。皮膚科で相談しましょう。

皮膚科医であれば、掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうの診断が可能です。皮膚の症状が似ている疾患[汗疱かんぽうや異汗性湿疹、白癬はくせん(みずむし、手白癬てはくせん)、手足の乾癬(かんせん)]もありますので、皮膚科医による鑑別診断が必要です。
また、掌蹠膿疱症では、関節や骨に炎症が起きて、腫れや痛みを生じることがあります。
(☞骨と関節の症状 掌蹠膿疱症性骨関節炎しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえん
胸鎖関節(首の付け根あたりの関節)に起こることが多いほか、せぼねや腰の骨などに生じる場合(脊椎炎せきついえん仙腸関節炎せんちょうかんせつえん股関節炎こかんせつえんなど)、手足の関節や骨に生じる場合もあります。その場合でも、皮膚症状の診断に関する情報はもとより、治療法の調整や順番など、整形外科医やリウマチ科医と皮膚科医との連携が必要になりますので、まず皮膚科医に伝え、連携してもらうとスムーズです。

さらに、発症のきっかけとなる病巣扁桃や副鼻腔炎は耳鼻咽喉科で、歯の根元や歯周の歯性病巣は歯科や歯科口腔外科で治療を受けることになりますが、これらは掌蹠膿疱症がなければ治療の必要がないものばかりです。すなわち、病巣治療はあくまで掌蹠膿疱症や掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)の治療を目的に行うため、通常、皮膚科医からの依頼が必要になります。

小林里実

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